2008年08月23日

『東京Ruby会議01』に参加してきた (後編)

東京Ruby会議01報告の続き(前編)。1人持ち時間5分の、Lightning Talkの開始。


最初は、森田尚氏の「DocDiff:Rubyで書かれたテキスト比較ユーティリティ」。Docdiffは行指向ではなく文字指向で差分を検出する日本語に対応した差分表示ツールで、Debianでは私がメンテナを務めている。デモで手間取りはしたものの、見事時間内にテキストの差分表示に成功していた。


二番手は松田明氏「Asakusa.rb設立のお知らせ」。RubyKaigiで角谷氏・ささだ氏・松田氏が超ご近所という衝撃の事実が判明というところから始まったこのグループ。「『飲みながらハック』というゆるふわな集まり」をテーゼとして、Ruby1.9をいじってみたり、「日本でRubyを作ってる人たちはRailsなんか使ってない」 vs 「Railsの人はRubyに興味も理解も愛情もない人が多すぎる」という超えられない壁で断絶している両ユーザーの交流を図るらしい。


続いての河野誠氏は、やはり同様に地域コミュニティ報告の「Tokyu.rb活動報告」。東急線沿線であればよし、沿線でなくても参加可能ならそれもよしというゆるいグループで、ADD(アルコールドリブン開発)によって成り立っているらしい。中規模活動目標としては、「ruby-trunkとedge-railsで飲み会の人数調整をする」が挙げられた。


最後は高井直人氏の「地域.rbのご提案 - Akasaka.rbの軌跡」。「笑いをとれるかという路線とは一線を画す」と述べつつ、淡々と話す中になぜか会場から笑いが漏れる。*.rbという場を作ることで、通常の宴席ではとても望めない技術話だとか、文献の輪読だとかもできるという主張には笑いつつもうなずけるものがある。


小休止を挟んで、バンカク社の柳澤康弘氏「Rails Outliner」。アウトラインエディタをRailsで記述して、サーバーにデータを持たせ、複数人で同時に編集することができる。編集結果はサーバーに送られ、わずかなタイムラグのみの「ほぼリアルタイム」で各接続クライアント画面に反映される。現時点ではアウトラインエディタの機能としてはそれほど高くなく、文字の入力、タブによるインデント変更、履歴、といった程度となっており、Emacs的な折り畳み機能などはない。パフォーマンス向上やEmacsライクショートカット、マインドマップ等形式の入出力などがTODOとして挙げられており、今後に期待したい。


荻野淳也氏の「あなたがMacでRubyを使うべき10の理由」。各所に笑いのツボを入れ、軽妙な語り口で聴衆を引き付けていた。RubyConfに行くと、皆Macユーザーだそうである。実際、今回の会場でもアンケートを取るとMacユーザーが大半を占めるという結果。言語の開発を主として務めるまつもと氏とささだ氏はMacユーザーではないが、「使う人はMac、作る人は別のOSでも」なのでいいらしい。MacとRubyを使うべき10の理由として荻野氏は、Unix(安定・簡素)、Preinstalled(デフォルトで用意されているのでおばあちゃんの環境にアプリケーションを構築するのも簡単!)、TextMate(すごく使いやすいコードエディタ)、RubyCocoa(Mac用のGUIアプリを簡単に作れる)、MacRuby(MacネイティブなRubyだから、ほかの環境じゃ使えない!)、Growl & ZenTest(イベント通知機能)、Gitjour(gitリポジトリをBonjourマルチキャスト)、Beauty(Rails Webサービスをリリースしてる37signalsによる紹介)、iPhone(RubyによるiPhone向けSDK)、Enthusiasm(I LOVE RUBY!)を挙げた。


クリアコード社の須藤功平氏による「Rabbit 2008」。彼はGoogle SoC 2005でSubversionのRuby bindingを作成したが、その絡みで/.jのAnonymous cowardに「スーパーハッカー」と呼んでもらったことがあり御礼が言いたいそうなので、自分がそうだという方は氏までご連絡されたい。講演の中心は、氏のライフワークとなっている著作ソフトウェアRabbitの紹介とプレゼン手法。Rabbitはプレゼンテーションツールで、一見して目立つのは画面下部にいるウサギと亀だろう。亀は時間、ウサギがスライドの経過枚数を表しており、亀にウサギが大きく遅れるのは不吉のサインというわけだ。Rabbitの基本ポリシーは、大きな文字と抽象化の2点。氏は、プレゼンに大きな文字を使うことで書きすぎて汚くなることを防ぎ、大事なことだけを、短くわかりやすい(わかった気にさせる)ことができると説く。Rabbitは入力、出力、外部インターフェイスの各所で抽象化を行っており、その例としてGL版の表示でページや文字を回したり、Webブラウザに表示したりといったデモを行って聴衆をどよめかせた。今後も、積極的に生きるためのRabbitのメンテナンスを続けるとのことだ。


最後の講演は、YuguiことRuby1.9リリースマネージャ園田裕貴氏による「Ruby1.9.1リリースに向けて」。1.9系初の安定版となる1.9.1は、今年の12月クリスマス前にリリースが予定されている(バグが直らなければ延期の可能性もある)。1.9.1は文法改善(ブロック引数やλ式など)、ライブラリの整頓(SOAP4R out、RubyGems inなど)、多言語化(StringやIOへのEncoding情報渡しサポート、エンコーディング変換)、バイトコードサポート(高速化・難読化、Pythonバイトコード変換など。現時点では日々変わっていて不定)といった特徴が挙げられる。安定へ向けては課題が多い。coverageの向上、RubySpecによる仕様構成、Redmineプロジェクト管理ツールを導入しようとしてるが人手が足りないし面倒くさい、各OSのサポートレベルでばらつきがある(supported/best effort/perhaps/not supportedという区分けを行い、今のところsupportedはDebian GNU/Linux 4.0 x86版のみ。OpenVMS、WinCE、OS/2、bcc32、Classic MacOSはメンテナの名乗りがないと危うい。djgppやhuman68k(!)は捨てることになりそう。BeOS、cygwin、GNU/Linux x86-64、FreeBSDはメンテナがいればbest effortになる)、ドキュメント活動は青木峰郎氏に期待しているがなかなか見通しが見えない、標準化はまだ端緒、などなど。プラットフォームメンテナ、Redmineの協力者、問題を次々と報告してくれる「クレーマー」、紹介するライター、お金を出してくれるパトロン、1.9を利用して不具合に自らぶち当たる人柱、人柱、人柱を求人中とのことだ。

最後に再び角谷氏が、地域Ruby会議として今後、札幌、九州、島根などで開催が計画されていること、本家たるRubyKaigiが来年東京近辺で開催予定であることを発表した。東京Ruby会議も第2回を開催するべく宣言され、東京Ruby会議01は拍手でその幕を閉じた。

さて、時間は夜の10時近い。公式な懇親会はないしRuby界隈の知人はあまりいないので、帰宅途中に1人で食べていこうと思ったものの、めぼしいところはどこも閉まっている…。結局スーパーの残り物惣菜でお茶を濁すことに…。しょぼーん。

なお、ニフティミーティングルームでは、後半になってから電源をお借りできたので助かった。無線LANについてはゲスト用キーパスフレーズが漏れ聞こえてはきたのだが、スタッフや講演者のご迷惑になってはいけないと思い、EMobile接続で済ませた(電波の入りは問題なし)。座ったポジションが悪くて撮影には不向き(講師の代わりに森田氏と須藤氏を激写しすぎ)だったが、机や椅子も2時間半の長丁場で座り詰めでも疲れることなく、会場提供のニフティ社には感謝する。マイクのコードが短くて、ちょっと苦労してたみたい。あれだと講師はうろうろできないし。
ライトニングトークでの大半を占めたとおり、最近のRubyコミュニティは地域グループ化しては、技術指向コミュニティあり、飲み会ドリブンコミュニティあり、と次々と設立されていて、昔のLUGみたいに分散衰退してしまわないかと不安に思えてしまうのだが、松田氏の言うように、主要開発メンバが日本に在住していて顔合わせも容易、母国語でそのまま通じ合える、世界的に使われている開発言語というのはRubyのほかになく、その特性を生かして各コミュニティも発展するものと信じたい。
何はともあれ、知り合いのそう多くない環境ではあるものの、けっこう楽しい時間を過ごすことができた。来年のRubyKaigiへの参加も検討しよう。